前回、市街化調整区域のメリット・デメリットを
解説しました。
今回は、具体的に、市街化調整区域を買おう!
でも何を注意していいかわからない・・・
そんなあなたのために、農地法5条に絞って
解説します。
市街化調整区域における建築のパターン

市街化調整区域を購入して「家を建築したい」
場合の3つのパターンを解説します。
①線引き前宅地

線引き前って?!

市街化調整区域に線引きされるために、
家が建っていて、宅地だったケースです。
内容 | |
定義 | 都市計画法による線引き(区域区分)が行われる前から、宅地として使われていた土地。 |
対象区域 | 主に「市街化調整区域」内に存在する宅地。 |
代表例 | 昭和40年代〜50年代にかけて造成され、 家が建っていた土地。 |
例えば昭和30年代に家を建てて住んでいた家族がいます。
昭和45年になって、
「あなたの土地は市街化調整区域です」
「建築に制限がかかります」
なんて一方的に言われたが、激オコ😡です。

ひどい!
そんなのあり?
そうなると、かわいそうですよね・・・
そこで、市街化調整区域では原則として
住宅の新築や開発行為が制限されますが
線引き前から存在していた宅地であれば、
条件を満たせば再建築で可能になるわけです。
<線引き前宅地の条件>
①線引き前に宅地として利用されていた証拠(例:登記簿や航空写真)
②現在も宅地利用が継続されていること
③開発許可や都市計画法の規定に適合していること

線引き前宅地の場合は、再建築可能な
ケースが多いです。
とはえい、自治体によって判断基準が異なり、
書類提出や事前相談が必要です。
※都市計画課、開発指導課に相談してください。
線引き前宅地は調整区域の売買の中で
一番、制約がゆるい?といえます。
②白地(はくち)

しろち?はくち?
ホワイトニングしてある
土地のこと?

本題の前に、基礎を解説します。

点線が「農業振興地域」です。
【農業振興地域】
都道府県が定める「農業振興地域整備基本方針」に基づき、
将来にわたって
農業を振興するべき地域として指定される地域のことを

なるほど
農業を盛り上げていこう!
って地域ね。

そうです。
農業振興地域と長いので
「農振(のうしん)」と呼びます。
※頭痛薬ではありません。

農業を盛り上げるのに
家なんてつくったら
怒られそう!

そうです。
土地狂っている・・・
ではなく、農業を振興していないですよね。
ここで、青地と白地が登場します。
□青地:「農業振興地域内農用地区域内農地」
今後10年以上にわたり農業利用を確保するため、農地以外の利用を厳しく制限。
また、農振除外の対象地です。
□白地:「農業振興地域内農用地区域外農地」
青地と比較すると農地以外への規制は比較的緩い。
また、農振除外は不要だが、、農地転用は必要です。

白地は農振除外(後で解説)
が不要なので、比較的条件が緩めです。

白地は農業を振興しなくてもいいのね
白地(はくち) | 青地(あおち) | |
定義 | 建物建築が一定条件下で可能な土地 | 原則として建物建築が認められない農地・山林など |
用途 | 既存集落や過去に建物があった宅地など | 主に農業用地、山林などの保全区域 |
開発許可 | 条件付きで可能 (例:既存宅地・線引き前宅地など) | 原則不可。特例や公益性の高い用途のみ可能 |
建築可能性 | 再建築や新築が条件付きで認められることが多い | 原則建築不可 |
農地転用 | 条件付きで可能 | 極めて難しい(農振除外→農地転用許可が必要) |
再建築 | 証明資料があれば可能な場合あり | 不可。例外的に許可が必要 |
相続・売買 | 一般の住宅用地としての価値がある場合も | 実質的に価値が低く、資産価値が限定的 |
色の意味 | 白=建築可能性があることを示唆 | 青=農業振興地域の農用地区域(農振青地) |
行政上の位置づけ | 市街化調整区域内でも住宅などの利用に配慮された地域 | 厳格に農業・自然保全を目的とした地域 |

白地なら家を作れる可能性が高い!
青地ならアウト!です。
筆者の父が太田市という田舎町に
青地を所有していますが、売れないどころか
貰い手がいません(汗)

太田市は土地を寄付でもらってくれないの?

寄付の受付はしていません(汗)
というか、面倒クサイんでしょうね。
農業委員会に行っても、
面倒臭そうに対応されました(汗)

ただし、青地でも、
クリニックや学校など
公営性が高い建物は
建築できる可能性が高いです。
③青地(あおち)
□青地:「農業振興地域内農用地区域内農地」
今後10年以上にわたり農業利用を確保するため、農地以外の利用を厳しく制限。
また、農振除外の対象地です。

土地を購入して、
おうち作るのは難しそう・・・

親族の土地に、
子供や孫が立てるなら
青地でも作れるケースがあります。
しかし、今回は農地法5条(他人が購入)
の考え方なので、難しいです。
市街化調整区域を購入して家を作る手順

市街化調整区域内で土地を購入し、
住宅を建てることは基本NGです。
しかし「一定の条件」を満たせば可能な場合もあり
購入から家を建てるまでの手順をわかりやすくまとめました。
①市街化調整区域内かどうか?調査
市町村の都市計画課や不動産会社に確認して、
その土地が調整区域か調べましょう。

簡易的に調べるには?

以下のツールがおすすめです。
農振法区分:農業振興地域内・農用地区域内(青地)
市街化調整区域
〇をクリックすると、調整区域か?青地か?わかります。

農振法区分が「設定なし」
の場合は、白地の可能性があります。

見た目で判断できない?

田んぼが区画整理されていたら、ほぼ青地。
学校や老人ホーム、コンビニがあちこち
青地かも?
畑と家が交互に点在しているなら
もしかしたら白地かもしれません。
気になった地番を調べて、市役所で質問してみましょう。
②利用目的・要件を整理
今回は「戸建て住宅を建築」するため、自宅用となります。
③建築の可否を役所で確認
自治体に「開発許可」や「建築許可」の可能性を事前相談しましょう。

「線引き前宅地」や「既存宅地」の有無も確認
しましょう。
④購入予定地の現況を調査
農地であれば農地転用が必要です。
ただし、「農振青地」の場合は
「農業振興除外(のうしんじょがい)」をする必要があります。

なるほど。
農業を振興するエリアじゃなくなるのね。
【農用地区域からの除外6要件】
①農用地以外に供することが必要かつ適当であって、
農用地区域以外に代替すべき土地がないこと
(ア) 具体的な計画があり、不要不急の用途ではないか?
(イ) 通常必要と認められる規模で、必要最小限の規模か?
(ウ) 農用地区域以外の地域において、代替する土地がないか?②地域計画の達成に支障を及ぼすおそれがないこと
③農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと
(ア) 農用地の集団性を損なうものではないか?
(イ) 農用地と農用地以外の土地の混在が生じないか?
(ウ) 周辺農用地の営農環境への支障が軽微か?④効率的かつ安定的な農業経営を営む者の
農用地利用集積に支障を及ぼすおそれがないこと
(ア) 農用地の利用集積を行っている農業者の経営規模に支障がないか?
(イ) 農用地の集団化が図られる場所にないか?⑤土地改良施設の有する機能に支障を及ぼす
おそれがないこと
(ア) 農業用用排水施設の分断や排水の阻害等のおそれがないか?⑥農業生産基盤整備事業(土地改良事業等)の工事完了公告が
あった年度の翌年度から起算して8年を経過している土地であること
(ア) 土地改良事業実施中、
または工事完了公告の翌年度から8年未満ではないか?

土地改良事業ってなに?

土地区画整理の田んぼバージョンです。
トラクターなど機械が入りやすく、
田んぼで農作業がしやすいようにします。
税金を使って改良するため、
その農振除外するなんて、
土地狂っていると思われます。

なるほど。
だから、8年経過って
条件をつけているのね。
8年経過していないのに
除外して、建物建てたら
確かにおかしい・・・
青地の場合、クリニックや老人ホーム事業など
公益性があるもの以外の、
戸建を建築することはあきらめましょう。

ちなみに、農振除外の申請は
①4月②10月の2回のみ
1年~1.5年かかるケースがあります。
フェーズ 【農振除外】 | 内容 | 期間の目安 |
①事前相談 | 自治体の農業委員会・農政課などに相談 | 即日~数週間 |
②除外申請受付 | 年に1~2回の受付期間がある (自治体による) | 年2回(春・秋)が一般的 |
③関係機関協議・調査 | 土地利用状況、公共施設との整合性、周辺農地への影響などの審査 | 約3~6ヶ月 |
④除外決定・通知 | 申請が認められた場合、正式に除外決定 | 1ヶ月前後 |
⑤地目変更・農地転用申請など | 必要に応じて農地法の手続きへ | 別途1~2ヶ月以上 |

ちなみに、青地は不動産仲介業者さんはやりたがりません(汗)

そうよね・・・
1年以上かけて、最後に除外できなかった、
開発許可や農地転用できなかったら・・・
0円仕事する人はいないわよね
④条件付きで売買契約
条件付きで、売買契約が必要です。
特約で、仮に農振除外できなかった、
開発許可、転用できなかったら、白紙解除できるようにしましょう。
⑤許可申請の準備
土地家屋調査士・行政書士などに依頼して
開発許可申請、農地転用許可(必要なら)をお願いしましょう。

白地は農振除外が不要なので、
開発許可、農地転用など認められやすいです。
市街化調整区域の開発許可・農地転用Q&A

市街化調整区域の開発許可、農地転用などについて
Q&A形式で回答します。
- Q都市計画法34条とは?
- A
原則として、市街化調整区域では新たな建築や開発は制限されていますが、
第34条に該当する場合には、
例外的に開発が許可されることがあります。
類型 | 内容(例) |
① 地域に必要な公共施設 | 学校、消防署、公園など |
② 農林業従事者住宅 | 農家の後継者が建てる住宅など |
③ 地域住民の利便施設 | コンビニ、商店、医療施設など |
④ 既存集落内の住宅 | 旧来からの集落における自己用住宅の建築 |
⑤ 工場や事業所 | 地域振興に資する工場・倉庫など(限定的) |
⑥ 特定の公益法人施設 | 社会福祉法人やNPO法人などが建てる施設 |
- Q都市計画法34条11号と12号とは?
- A
11号:
市街化区域に隣接または近接し、
市街化区域と一体的な日常生活圏を構成している地域。
おおむね50以上の建築物が連担している地域(50戸連担地区)のうち、
条例で指定する区域内での開発行為で、予定建築物の用途が環境の保全上支障ないもの12号:
・分家住宅の建築
・既存集落内における自己用住宅

11号、12号って
人造人間?

それは17号、18号です。
簡単に言うと、
11号なら土地を購入して
戸建を建築できるかもしれません。
12号ならオワコンです。
埼玉県川越市では、2006年11号区域の指定が行われましたが、
現在は廃止されています。
つまり、11号は条件が緩く、家を作りすぎた?
ため、廃止にしたかもしれません。

11号は人が集まらないから、
建築許可を出しやすい土地?
12号は、血縁関係の農家・分家住宅
といったイメージでしょうか?
12号の場合、両親や祖父母の土地に
自宅を作るときに、適用条件を満たせば建築可能に。
- Q開発許可や農地転用の手続きにいくらかかる?
- A
以下、大まかですが、かかる費用をまとめました。
※あくまで概算です。
<市街化区域の農地転用>60,000円~
・農地法5条届出:50,000円
・土地改良区申請:10,000円(※区域内の場合)
土地改良区の受益地内の場合に必要です。
※別途、決済金が掛かるためケースもあります

市街化区域内の農地のため
届け出だけでOK
行政書士・土地家屋調査士に
依頼してなくても、自分で
提出する人もいるようですね。
<白地の農地転用>180,000円~
・農地法5条届出:50,000円
・土地改良区申請:10,000円
・都市計画法43条許可申請(適合証明) 100,000円
・転用完了報告手続き 20,000円
<青地の農地転用>305,000円~
・農用地除外申請:120,000円
・農地法5条届出:50,000円
・土地改良区申請(1件分):15,000円
・都市計画法43条許可申請(適合証明) 100,000円
・転用完了報告手続き 20,000円
都市計画法の「宅地」で、開発行為を伴わない単なる建築行為は
、都市計画法第43条第1項の規定による建築の許可です。

これって手続きの費用よね?
盛り土したり、水道を引き込んだり
別にお金かかるでしょ?

調整区域内の土地は安いですが、
田んぼに土を盛り土したり、
前面道路に水道がないため、
遠くから引っ張ってくる・・・
など工事代金が100~200万円以上かかる
ケースがあります。
まとめ

□市街化調整区域における建築のパターン
①線引き前宅地:条件ゆるい
②白地(はくち):条件少しゆるい
③青地(あおち):条件厳しい
□市街化調整区域を購入して家を作る手順
①市街化調整区域内かどうか?調査
②利用目的・要件を整理
③建築の可否を役所で確認
④条件付きで売買契約
⑤許可申請の準備
□都市計画法34条11号と12号
11号は緩め
12号は厳しい(既存集落内における自己用住宅)
以上、市街化調整区域の農地転用について
あなたのお役に立てれば幸いです。
コメント