「成年被後見人が所有している不動産を売却したい」
「所有者が施設に入所していて、本人と直接やり取りができない」
「成年後見人が不動産を売却する場合、家庭裁判所の許可は必要なの?」
今回は、当社が実際に担当した、成年後見人が関わる戸建て住宅の売却事例をご紹介します。

物件は前橋市にある築約35年の木造2階建て住宅です。
所有者である女性は施設に入所しており、成年後見人には司法書士の先生が就任していました。
今回の売却では、相続に関する調整、家庭裁判所への売却許可申請、査定価格の根拠資料の作成、買主の選定など、通常の不動産売却とは異なる対応が必要でした。
最終的には不動産買取業者への売却となり、最初の相談から決済・引き渡しまで約5か月で完了しました。
実際に担当した不動産会社の立場から、売却までの経緯や苦労した点をお伝えします。
※プライバシー保護のため、個人が特定される情報や売却価格などは掲載していません。
司法書士からの紹介で始まった売却相談

今回の案件は、以前からお付き合いのあった司法書士の先生からの紹介でした。
もともと当社が先生から不動産査定の依頼を受けたことがあり、その仕事をきっかけに関係ができていました。
今回、先生からご相談いただいたのは、先生自身が成年後見人を務めている女性の自宅についてでした。
所有者本人はすでに施設へ入所しており、自宅は空き家になっていました。
売却を検討する背景には、施設費用など、今後の生活に必要な資金を確保する必要があったことがあります。
ただし、当社は売却代金の具体的な使途までは確認していません。
また、本人との直接の意思疎通は難しい状況で、当社は施設を訪問せず、成年後見人である司法書士の先生とのやり取りを中心に進めることになりました。
夫名義だった自宅。相続の整理に約3か月
今回の不動産は、もともと亡くなったご主人が所有していた住宅でした。
ご主人の死亡により、妻と娘さんが相続人となりました。
その後、遺産分割協議を進めるにあたり、娘さんとの間で調整が必要になりました。
娘さんは、建物の半分相当額を受け取ることで遺産分割協議書に署名する意向でした。

当社としては、家族間の事情から協議が長引く可能性もあると感じていました。
実際、最初に当社が現地調査・査定を行った後、相続に関する調整に約3か月を要しました。
最終的には金額面で折り合いがつき、娘さんには建物の半分相当額が支払われ、遺産分割協議書にも署名していただくことができました。
これにより、土地・建物ともに奥様の単独所有となりました。
なお、この相続に関する話し合いは司法書士の先生が担当し、当社は基本的に関与していません。
不動産会社が相続人間の法律問題に踏み込むのではなく、司法書士の先生に専門的な調整をお願いし、当社は不動産査定と売却準備を進めるという役割分担でした。
築35年の戸建て。残置物と建物の状態を調査

相続関係の整理が進んだ後、当社と成年後見人である司法書士の先生との間で媒介契約を締結しました。
媒介契約書には、先生が成年後見人として署名・押印する形を取りました。
対象物件は次のような住宅です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 前橋市 |
| 築年数 | 約35年 |
| 構造 | 木造2階建て |
| 建物面積 | 約26坪 |
| 空き家期間 | 約1年弱 |
| 家財道具 | 家具・家電などが多数残存 |
| 雨漏り | 現地確認時には確認されず |
| 床の状態 | 台所・2階子供部屋などに不陸あり |
室内には家具や家電などがかなり残っていました。
また、床の一部に不陸があり、台所や2階の子供部屋などでは修繕が必要と考えられる状態でした。
雨漏りは確認されませんでしたが、築35年ということもあり、建物全体の劣化や今後の修繕費用についても考慮する必要がありました。

さらに、購入を検討した業者側がリフォーム業者を同行して現地を確認したところ、浴室や屋根についても懸念事項が出てきました。
浴室は昔ながらのタイル張りで、ユニットバスに交換する場合、既存建材にアスベストが含まれている可能性が懸念されました。
また、スレート屋根についてもアスベスト含有の可能性が指摘されました。
ただし、これらはあくまで可能性の話であり、専門的な分析調査によって含有が確認されたわけではありません。
このように、単純に土地と建物の価格だけで売却を考えられる物件ではありませんでした。
家庭裁判所への提出を考慮した査定書を作成
今回の売却で、特に重要だったのが不動産査定書です。
成年後見人が本人の居住用不動産を売却する場合、原則として家庭裁判所の事前許可が必要になります。
※売買契約後に許可申請も可能ですが、購入者の意思が固いのあれば、事前許可がおすすめ
今回の住宅は、所有者本人が施設へ入所する前に住んでいた自宅でした。
現在は施設に入所していても、以前住んでいた住宅は居住用不動産に該当し、売却に家庭裁判所の許可が必要となる場合があります。
家庭裁判所の案内でも、売却の際の標準的な添付書類として、不動産業者が作成した査定書が挙げられています。
今回、当社では次のような内容を盛り込んだ査定書を作成しました。
- 周辺の不動産成約事例・売出事例
- 土地の査定価格
- 建物の築年数や劣化状況
- 室内に残っている家具・家電などの残置物
- 建物の修繕費用や解体費用を考慮した価格
- 一般個人向けの売却価格と不動産業者による買取価格の違い

単に査定価格を記載するだけでなく、なぜその金額になるのか、どのような事情を考慮したのかを説明できるようにしました。
特に今回の物件は、残置物が多く、床の不陸なども確認されていたため、一般的な中古住宅と同じように価格を考えることはできません。
また、一般個人向けに売却する場合と、買取業者に売却する場合では、購入後の修繕や残置物処分などの負担が異なります。
そのため、売却方法による価格の違いも査定書に盛り込みました。
固定資産税評価額より売却価格が低い。家庭裁判所から問い合わせ
今回、家庭裁判所への売却許可申請にあたり、司法書士の先生から相談がありました。
売却予定価格が固定資産税評価額よりも少し低かったため、家庭裁判所から価格について確認があったとのことでした。
ここで重要だったのが、当社が作成した査定書と価格の根拠です。
当社から司法書士の先生に対して、査定価格の根拠を詳しく説明しました。
具体的には、周辺の成約事例、建物の劣化状況、残置物、修繕費・解体費用、一般個人向けと業者買取の価格差などです。
その説明と査定書をもとに、司法書士の先生が家庭裁判所へ回答しました。
結果として、書類不備による差し戻しや追加修正もなく、売却許可が下りました。

今回のケースでは、申請から許可まで約10日でした。
もちろん、家庭裁判所の審理期間は案件ごとの事情や提出書類によって異なるため、常に10日程度で許可が下りるわけではありません。
ただ、今回の経験から、成年後見人が関わる不動産売却では、査定価格の根拠を客観的な資料で説明できることが非常に重要だと感じました。
一般個人から購入希望。しかし、残置物の条件が折り合わず
売却活動を開始すると、最初は一般個人の購入希望者が現れました。
しかし、ここで問題になったのが室内に残っている家具や家電などの処分費用です。

買主側は残置物の処分費用を考慮した値下げを希望していましたが、売主側との価格条件が折り合いませんでした。
結果として、一般個人への売却はまとまりませんでした。
通常の中古住宅であれば、売主側で荷物を片付けてから引き渡す方法もあります。
しかし、今回の物件では荷物がかなり残っており、売主本人から建物の過去の修繕履歴や不具合などを詳しく聞き取ることも難しい状況でした。
私自身、売却後に建物の隠れた不具合が見つかり、買主とのトラブルになる可能性を心配していました。
そこで、一般個人への売却に固執せず、不動産買取業者への売却も検討することにしました。
最終的には不動産買取業者へ。価格よりも引き渡し後の安心を重視
最終的には、不動産買取業者への売却となりました。
買取業者はリフォーム業者を同行して現地を確認し、床の不陸などの状態も調査しました。
また、残置物についても、そのまま残した状態で買い取ってもらえる条件でした。
最終的な買取価格は、一般個人向けの売却条件と比較して約5%低くなりました。
それでも、今回の案件では買取業者への売却が適切だと判断しました。

その理由は、価格だけでは判断できない引き渡し後のトラブルリスクです。
本人から建物の過去の状況や修繕履歴などを詳しく確認できない以上、一般個人に購入していただいた場合、引き渡し後に思わぬ問題が発生する可能性も考えられました。
一方、今回の買取業者は、リフォーム業者を同行させて建物を確認しており、残置物もそのまま引き受ける条件でした。
契約条件についても、現状有姿での引き渡し、契約不適合責任免責という内容で調整しました。
もちろん、契約不適合責任の免責特約は、契約内容や売主の認識などによって扱いが異なるため、単に免責と記載すればすべての責任がなくなるというものではありません。
今回は、買主側にも建物の状態を確認してもらい、双方で条件を確認したうえで契約を進めました。
約5%の価格差はありましたが、売主本人の状況や建物の状態、残置物の問題、売却後のリスクを総合的に考慮した判断でした。

ちなみに、当社でも買取を検討しましたが、
金額的には購入した業者の方が高いため、そちらに譲りました。
家庭裁判所の許可後に正式契約。決済・引き渡しへ
買主が決まった後、成年後見人である司法書士の先生が、売買契約の仮契約書を添えて家庭裁判所へ売却許可を申請しました。
約10日で許可が下り、その後、正式な売買契約を締結しました。
正式な売買契約書は、事前に提出した仮契約書と同じ内容で進めました。
契約自体は、通常の不動産売買と大きく変わるものではありませんでした。
契約書への署名・押印は、成年後見人である司法書士の先生が成年後見人として行いました。
決済・引き渡しの際には、買主側の司法書士も来られ、成年後見人の先生、買主、当社が関係者として取引を進めました。
売却代金は、成年被後見人である奥様本人名義の銀行口座に直接振り込まれました。
当社の仲介手数料についても、奥様本人の口座からお支払いいただきました。
売却代金がその後どのように使われたかまでは、当社では把握していません。
最初のご相談から決済・引き渡しまで、全体で約5か月。
そのうち約3か月は相続に関する調整期間であり、売却活動だけで見れば、それほど長期間を要した案件ではありませんでした。
成年後見人が関わる不動産売却で、当社が感じたこと
今回の案件を通じて、私自身が強く感じたことがいくつかあります。
高く売ればよい、というものではない
不動産の査定価格は、安すぎてもいけませんし、高すぎてもいけません。
安く売却すれば本人の大切な財産を不当に減らしてしまう可能性があります。
反対に、相場より高い価格を設定して売却できなければ、空き家の維持管理や固定資産税などの負担が続くことになります。
成年被後見人の財産を売却する以上、適切な価格の根拠を示すことが大切だと感じました。
本人と直接やり取りができないもどかしさ
今回、当社は所有者本人と直接面会していません。
建物の過去の修繕履歴や不具合についても、本人から直接聞き取ることができない状況でした。

通常の不動産売却であれば、売主本人に過去の雨漏りや修繕履歴などを確認することがあります。
しかし今回は、そのような確認が難しく、成年後見人である先生との連携が欠かせませんでした。
本人と直接意思疎通ができない中で取引を進めることには、正直なところ、もどかしさもありました。
だからこそ、買主側にも建物の状態を十分に確認してもらい、売却後のトラブルをできるだけ避けられる売却方法を選択する必要があると考えました。
司法書士など専門家との連携が欠かせない
今回の案件では、司法書士の先生が相続に関する調整や家庭裁判所への申立てを担当し、当社は不動産査定、査定価格の説明、販売活動、買主との条件調整を担当しました。
それぞれの専門分野を生かして連携することで、スムーズに売却を進めることができました。
また、家庭裁判所から価格について問い合わせがあった際にも、当社が査定の根拠を説明し、先生から回答していただくという連携ができました。
今後も、司法書士などの専門家と連携しながら、成年後見人が関わる不動産売却に対応していきたいと考えています。
よくある質問Q&A

- Q成年被後見人が所有する自宅は売却できますか?
- A
売却できる場合があります。ただし、成年被後見人本人の居住用不動産を処分する場合には、原則として家庭裁判所の許可が必要です。成年後見人が手続きを進めます。
- Q本人が施設に入所していても家庭裁判所の許可は必要ですか?
- A
施設に入所する前に住んでいた自宅も、居住用不動産に含まれる場合があります。
現在住んでいないからといって、許可が不要になるわけではありません。
- Q家庭裁判所に提出する査定書は必要ですか?
- A
裁判所が案内する標準的な添付書類には、不動産業者が作成した査定書が含まれています。売却価格の根拠を説明するためにも、具体的な資料を準備することが重要です。
- Q成年後見人がいる不動産は、不動産会社に売却を依頼できますか?
- A
依頼できます。成年後見人と不動産会社が連携し、査定、買主探し、売買条件の調整などを進めることができます。
最後に:成年後見人が関わる不動産の売却もご相談ください

成年被後見人が所有する不動産でも、適切な手続きを踏むことで売却できるケースがあります。
ただし、通常の売却と同じように進められるわけではありません。
特に本人の居住用不動産を売却する場合には、家庭裁判所の許可が必要となるため、成年後見人や司法書士などとの連携が重要です。
今回のように、相続関係の整理が必要なケースや、空き家に荷物が大量に残っているケース、建物の状態が分からないケースもあります。
リヤマ不動産では、群馬県内の不動産売却・空き家相談を承っています。
「成年後見人がいる不動産を売却したい」
「親が施設に入り、自宅が空き家になっている」
「成年後見人をしているが、不動産の売却方法が分からない」
「家庭裁判所に提出するための査定書を作成してほしい」
このようなお悩みがありましたら、ご相談ください。
売却するかどうか決まっていない段階でも構いません。
不動産の状況を確認し、売却方法や必要な手続きについて、できるだけ分かりやすくご説明いたします。


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