不動産の決済日にどうしても立ち会えない!

仕事が忙しくて、平日の決済日の立ち合いは難しそう・・・
不動産を売却するとき、「決済日にどうしても立ち会えない」というケースがあります。
仕事や遠方への移動、入院、海外居住、介護など、理由はさまざまです。

結論からいえば、売主本人が決済当日に不在でも、不動産売買を進められるケースはあります。
代表的な方法は、次の3つです。
- 司法書士が事前に売主本人と面談し、本人確認・売却意思を確認する
- 売主が信頼できる代理人を選任し、委任状によって手続きを任せる
- 立会いをせず、司法書士・仲介会社・金融機関などが事前に段取りを整えて決済する
法務局も、不動産登記について代理人による申請を認めており、代理人の権限を証明する情報が必要としています。
また、近年は「立会なし決済」「非対面決済」と呼ばれる方法も広がっています。
実務上、事前に売主・買主と司法書士が面談し、本人確認や意思確認、必要書類の確認を済ませ、決済当日は電話やオンライン等で代金支払いを確認して登記申請する方法もあります。

コロナの影響で非接触の流れで、決済日不在が多くなったようです。
また、遠方に住んでいたり、多忙な場合など、
売主または買主不在で決済引き渡しするケースが増えつつあります。
ただし、「本人がいなくても大丈夫」という意味ではありません。
重要なのは、決済当日に本人がいるかどうかよりも、売主本人の意思確認と、登記・代金決済・物件引渡しを安全に連動させることです。
不動産売買の代金決済で売主の立ち会いが必要な理由
不動産売買の「決済」は、単に残代金を受け取るだけの日ではありません。
一般的には、次の手続きをまとめて行います。
決済当日に行う5つの主な手続き
| 手続き | 主な内容 |
|---|---|
| ① 本人確認 | 売主・買主などの本人確認 |
| ② 登記書類の確認 | 所有権移転などに必要な書類を確認 |
| ③ 残代金の支払い | 買主から売主へ売買代金の残額を支払う |
| ④ 諸費用の精算 | 固定資産税等の精算、仲介手数料など |
| ⑤ 引渡し | 鍵・関係書類などを買主へ引き渡す |
売買による所有権移転登記については、法務局が「所有権の移転や抵当権の設定など、不動産の権利に関する登記」を司法書士に依頼できると案内しています。
【図解】通常の立会決済

このように、決済では「お金」と「不動産の権利」を安全に連動させることが重要です。
そのため、売主本人が決済に来られない場合でも、この安全な流れを別の方法で再現する必要があります。
司法書士による本人確認・売却意思確認の重要性
売主不在の決済で、特に重要なのが司法書士による本人確認です。
「売主の家族が代理で来ればいい」という単純な話ではありません。
司法書士は、登記手続きだけでなく、誰が本人なのか、本人が本当にその不動産を売却する意思を持っているのかなどを確認します。
日本司法書士会連合会も、不動産取引における司法書士による本人確認について、「人・物・意思」の確認をテーマに案内しています。
つまり、
本人が決済日に出席できないことと、本人確認を省略できることは別問題です。
ここを混同しないことが大切です。
売主が決済に出席できない(不在)場合の対応手順
売主本人が決済に出席できない場合、代表的には次のような流れで準備します。
【図解】売主不在の決済※代理人の場合

① 司法書士による事前の本人確認・意思確認(対面またはオンライン)
まず、売主本人が決済当日に来られないことを、早めに司法書士へ伝えます。
そのうえで、司法書士と売主本人が事前に面談します。
面談では、本人確認だけでなく、
- 本当に本人なのか
- この不動産を売却する意思があるか
- 売買契約の内容を理解しているか
- 誰に売却するのか
- 売買代金はいくらなのか
- 売却について問題がないか
などを確認することがあります。
法務省の不動産登記事務取扱手続準則でも、資格者代理人による本人確認情報について一定の要件が定められています。
なお、事前確認の方法は案件によって異なります。

対面での面談が必要なのか、オンライン等で対応できるのかは、担当司法書士の判断を確認してください。
※遠方の場合は、ズーム面談のケースが多いです。
特に、
- 高齢の売主
- 認知機能に不安があるケース
- 海外居住者
- 入院中
- 共有名義
- 相続した不動産
- 成年後見制度が関係するケース
などは、通常の売買より慎重な確認が必要になる場合があります。
② 信頼できる代理人(親族等)の選定
売主本人が決済に出席できない場合、代理人を立てる方法があります。
代理人は、必ずしも親族でなければならないわけではありません。
ただし、不動産売買は高額な取引です。
そのため、実務上は、
- 配偶者
- 子
- 兄弟姉妹
- 親族
- その他、売主が信頼できる人物
などから慎重に選びます。
代理人を選ぶときのポイント
「近くに住んでいる人」より、「売買内容を理解して責任感がある人」を選ぶことをおすすめします。
代理人には、場合によって、
- 決済への出席
- 書類への署名・押印
- 鍵の受領・引渡し
- 買主との確認
- 仲介会社との連絡
などを任せる可能性があります。
ただし、どこまで代理人に権限を与えるかは、委任状の内容と司法書士・仲介会社との打ち合わせによって決めます。
③ 委任状の作成と必要書類の準備・受託
代理人を立てる場合は、委任状を用意します。
法務局は、代理人によって登記申請をする場合、代理人の権限を証明する情報を提供する必要があり、その具体例として委任状を案内しています。
委任状に記載する主な内容
一般的には、
- 委任者である売主の氏名・住所
- 代理人の氏名・住所
- 対象となる不動産
- 委任する事項
- 委任日
- 売主の署名・押印など
を記載します。
ただし、不動産売買の委任状は、ネット上のテンプレートをそのまま使えばよいとは限りません。
売買契約、所有権移転登記、抵当権抹消、残代金受領、鍵の引渡しなど、どこまで代理権を与えるかによって内容が変わるためです。

委任状は担当司法書士や仲介会社と内容を確認してから作成するのが安全です。
フォーマット/書き方などは、司法書士さん/不動産業者の指示に従ってください。
必要書類の一例
売主側では、物件や取引内容によって、
- 登記識別情報または権利証
- 印鑑証明書
- 実印
- 本人確認書類
- 住民票等
- 固定資産税関係書類
- 委任状
- その他、司法書士が指定する書類
などが必要になります。
必要書類はケースによって変わるため、「一般的な一覧」だけで判断せず、担当司法書士から指定された書類を揃えることが重要です。
④ 決済当日の代理人による手続き・鍵の引き渡し
準備が整えば、決済当日は代理人が売主に代わって手続きを行います。
ただし、ここでも重要なのが、
「代理人が来れば自動的に決済できるわけではない」
という点です。
司法書士が事前に本人確認を済ませ、登記関係書類を確認し、決済当日の流れについて関係者間で合意している必要があります。
立会なし決済の場合には、事前に司法書士が売主と面談し、必要書類を預かったうえで、
決済日に売主から「代金を受け取った」と連絡を受けてから登記申請します。
売主不在で決済を進める際の4つの注意点
①委任状の記載内容と有効期限の徹底確認
最も避けたいのが、決済直前になって、
「委任状の内容が足りない」
「書類の期限が切れている」
「印鑑が間違っている」
といった問題が発覚することです。
特に不動産売買では、委任する権限の範囲を明確にする必要があります。
委任状は「とりあえず書いておく書類」ではなく、代理人が何をできるのかを決める重要書類です。
また、印鑑証明書などの有効期限や必要部数は、登記の内容によって異なる場合があります。
そのため、
委任状を自分で作成してから司法書士に見せる
より、
司法書士に必要事項を確認してから作成する
ほうが安全です。
代理人への申告・申送り事項(設備や近隣情報)の事前共有
売主不在の場合、見落とされやすいのが「登記以外の引渡し」です。
例えば、
- 鍵の本数
- ポストの鍵
- リモコン
- 境界に関する資料
- 設備の使用方法
- 給湯器
- エアコン
- 敷地内の物置
- ゴミ出し
- 近隣との申し合わせ
- 自治会関係
- 残置物
- 水道・電気・ガスの状況
などです。
売主本人しか分からない情報がある場合は、決済前に代理人や仲介会社へ共有しておきましょう。
買主側・仲介業者・金融機関への事前承諾と打ち合わせ
売主側だけで決めてはいけません。

不在決済では、売主・買主・司法書士・仲介会社・金融機関など、関係者全員のスケジュールと手順を合わせる必要があります。
特に買主が住宅ローンを利用する場合は、金融機関側の手続きも関係します。
そのため、
「売主が来られないので代理人を立てます」
と決めた段階で、仲介会社を通じて司法書士・買主・金融機関へ早めに共有します。
通常の決済と売主不在決済の比較
| 項目 | 通常の立会決済 | 売主不在・立会なし等 |
|---|---|---|
| 売主の出席 | 原則出席 | 不在でも対応できる場合あり |
| 本人確認 | 決済時に実施 | 事前に実施することが多い |
| 委任状 | 不要の場合あり | 代理方式なら重要 |
| 書類確認 | 当日にまとめて確認 | 事前確認が重要 |
| 代理人 | 原則不要 | 必要になる場合あり |
| 事前打合せ | 標準 | より重要 |
| 決済当日の負担 | 大きい | 軽減できる場合あり |
| 注意点 | 当日の書類不足 | 事前準備の不足 |
売主不在=特殊で危険な方法、とは限りません。
むしろ、事前確認を十分に行えば、決済当日の負担を減らせる場合があります。
代理人を立てられない場合の対処法
「代理人をお願いできる人がいない」というケースもあります。
この場合、無理に親族などへ任せる必要はありません。
まず検討したいのが、司法書士による事前確認を利用した立会なし・非対面型の決済が可能かどうかです。
実際に、事前面談で本人確認・意思確認・書類確認を行い、決済当日は当事者が集合せずに手続きを進める実務例があります。
売主不在の場合の選択肢

ただし、どちらの方法を採用できるかは、司法書士、金融機関、買主側の条件、売買契約の内容などによって異なります。
【Q&A】売主不在の決済に関するよくある質問

- Q海外居住や入院中の場合でも事前の意思確認は可能?
- A
可能な場合がありますが、個別判断です。
海外居住者や入院中の売主の場合、通常の対面確認が難しいため、司法書士へ事情を早めに伝えることが重要です。オンラインによる確認、訪問による確認、その他の本人確認方法など、司法書士が案件に応じて方法を検討します。
不動産登記ではオンライン申請も制度として整備されており、法務省も電子的な申請・委任情報について案内しています。
ただし、 「オンラインで本人確認できる=すべての不動産決済がオンラインだけで完結する」
という意味ではありません。本人の状況や司法書士の判断によって対応が変わります。
- Q決済の代理人は誰でもなれる?
- A
法律上の代理人という仕組み自体はありますが、不動産売買では「誰を代理人にするか」が非常に重要です。
親族だから自動的に代理人になれるわけではありません。
売主本人が適切に代理権を与え、必要な委任状等を準備する必要があります。
法務局も、代理人による登記申請には代理人の権限を証明する情報が必要としています。
また、代理人を立てる場合でも、売主本人の意思確認が不要になるわけではありません。「代理人がいるから本人確認はいらない」という考え方は避けてください。
まとめ:決済日に出席できなくても事前準備でスムーズな売却が可能

不動産売買の決済は、必ずしも「売主本人が当日にその場へ行かなければ成立しない」というものではありません。
売主が決済に立ち会えない場合でも、
- 司法書士へ早めに相談する
- 売主本人の本人確認・売却意思確認を行う
- 代理人方式か、立会なし方式かを検討する
- 委任状・登記関係書類を事前に準備する
- 買主・仲介会社・司法書士・金融機関と手順を共有する
- 鍵や設備などの引渡し事項も事前に整理する
という順番で準備すれば、スムーズに進められる可能性があります。
特に重要なのは、
決済当日に売主がいないことよりも、決済前に売主本人の意思確認と必要書類の確認を終えておくことです。
立会なし決済は、近年の不動産取引で実務上利用されている方法の一つです。
一方で、案件によって必要な手続きは異なります。
実際に、立会なし決済では事前に司法書士が売主と面談し、必要書類を預かったうえで、決済日に代金支払いを確認して登記申請する流れが紹介されています。
「決済日に仕事を休めない」「遠方に住んでいる」「入院していて外出できない」といった事情がある場合も、決済直前になって相談するのではなく、売買契約後の早い段階で仲介会社と司法書士へ相談することをおすすめします。

不動産売却のご相談はリヤマ不動産へお気軽にお問合せ下さい。
参考にした権威性の高い情報源
法務省・法務局
法務局「不動産登記申請手続」
所有権移転登記など、不動産登記の基本的な手続きや司法書士への依頼について確認できます。
法務省「不動産登記事務取扱手続準則」
資格者代理人による本人確認情報など、不動産登記の実務上重要な取り扱いを確認できます。
登記・供託オンライン申請システム「代理申請について」
代理人による登記申請や委任情報について確認できます。
日本司法書士会連合会
不動産取引における司法書士の本人確認について、「人・物・意思」の観点から説明しています。



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